2006年1月14日 読売新聞
学習到達度を見る「絶対評価」導入で、入試が変容している。
「こんなに幅が広いんですよ」。首都圏の進学塾「市進学院」(本部・東京)の金野光宏・副校長は、棒グラフが描かれた紙を机に広げて、こう訴えた。
その元となる調査は一昨年、同学院に通う中学3年生約1万2000人を対象に実施した。棒グラフはこのうち、通知表で「5」をとった生徒を抽出し、同学院による模試の成績(偏差値)と比べたものだ。
英語の場合、「5」の生徒は約4000人いたが、偏差値で見ると、上は73から下は31までばらばら。偏差値50を下回った「5」の生徒も13・5%いた。ほかの教科でも偏差値70台から20台まで分布。5教科オール5という生徒も、偏差値50未満が2・3%いた。
通知表や内申書(調査書)に記入される学業成績が、相対評価から絶対評価に変わり、「こんな内申書では入試の評価にはなりえない」という声が上がっている。内申書は一発勝負の入試では測れない日ごろの学力や学習態度を見る手法として定着していたが、その内申書が信用できないというのだ。「絶対評価は学力のものさしとは言えず、選抜試験には向かない」と、金野さんも断言する。
こうした事態に、打開策も練られた。たとえば都内では2002年、私立校で作る「東京私立中学高等学校協会」が、私立高校を受験する中学生の学力を測る「到達度診断テスト」を入試前に実施しようとした。しかし現在も継続協議のままで、実施されていない。一部の高校から「学校の序列化につながる」、都教委からも「入試の早期化になる」と批判されたためだ。
同協会の担当者は「その結果、学力テストの比重を増やす私立高校が増え、業者テストの成績の提出を求める私立高校もあると聞いている」と打ち明ける。
公立高校も同様だ。全国の状況については文部科学省が分析中だが、模擬テスト会社「進学研究会」(本社・東京)などによると、関東1都3県では、普通科の約6割が昨年度の入試で、内申書より学力テストに高い比重を置いたという。
高校だけではない。都内の公立中高一貫校は志願者が多い場合、門前払いをする。その選抜の際、中高一貫校が評価できるのは内申書しかない。「優秀な児童が集まるだけに、内申書が少しでも悪いと試験すら受けられない。中高一貫校に進学すると学校に伝え、成績を考慮してもらうよう相談してください」。ある塾ではこんな指導もあったという。
児童・生徒のやる気を促すために導入された絶対評価。しかし、こと入試に限っては、内申書の意義を握りつぶしつつある。(大木隆士)
相対評価と絶対評価 相対評価は学業成績の位置をクラスや学年の中で測るため、「5」や「4」の割合が限定される。これに対し、絶対評価は設定した目標に個々の子供がどれだけ到達したかを見るので、極端な場合、全員が「5」ということもあり得る。学習意欲や努力を評価するのが狙いで、基礎学力の確実な習得を目標とした新学習指導要領に合わせ、2002年から導入された。
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